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Monthly Archives: December 2014

食と建築。一見関係のなさそうな二つのトピックですが、食糧生産から、流通、販売、消費までの一連の流れを観察すると、食というトピックの周りに独特の空間タイポロジーが成立しているという事が分かります。

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世界的な人口の増加とそれに伴う食糧需要の高まりは数量的な問題であるとともに、実は空間的な問題でもあります。例えばシーフード。寿司ブームとともに新興国での中産階級層の増加によって世界的に魚の消費量が増加していますが、天然魚の資源量は頭打ちであり、養殖による生産が増加しています。2010年には養殖魚の生産が初めて牛肉の生産量を上回り、2030年には世界の需要の60%は養殖によって賄われると推定されています。漁業がモビリティーテクノロジーの進化とともに発展したのに比べ、養殖業では農業と同じく土地(水上)利用と水資源の確保が重要な課題です。ちなみに世界の養殖生産の約58%は淡水魚養殖で、陸上で行われています。スケールがやばいです。でかいです。

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歴史的にみると、食糧生産の空間は産業構造の変化やスケールの増大によって都市の中から辺境へと締め出されてきました。先進国における第一次産業の空洞化なんかは何かと問題にされますが、要は生活空間として魅力がないんですよね。これを世界的な経済活動のリアリティーの中でどう考えるか。故黒川紀章氏は、農村は農産物を生産する近代的な都市でなければならないと1960年に農業都市計画を提案しました。

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それとも完全オートメーション化された無人のディストピア?

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いやー、これはちょっと建築家として悲しすぎるな。どっちかっていうと世界的な食糧生産事情はリアルにこっちよりだと思うけど。

今回のプロジェクトでは、養殖という水の産業のための都市を考えてみました。長くなるので詳細は省きますが、農地の塩害という問題に対して海水魚養殖を陸上に持ってきてしまおう!というビジネスモデルの提案を下敷きにしています。その大きなマスタープランを書いたうえでの、インフラ集積基地としての港町的な都市の提案です。養殖の生簀のグリッドのど真ん中に、そのグリッドのエッジをプログラムで建築化した都市として構想しています。稚魚の孵化場や集荷場、リサーチセンターなどとともに住居が集積しています。プログラムを一か所に集中させることで、一般的な分散型の農村では達成できない建築的な効果が生まれるのではないかと。黒川路線を引き継いだメガアーキテクチャーです。どうでしょう?

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Reference:

1.  Image: NASA – Cropland in Kansas, USA. 2. Aquaculture at Hainan China. Image: http://flightbiz.net/?attachment_id=42 3.Shrimp aquaculture practice in Madagascar. Image: http://www.unima.com/page_aquaculture.php 4. Image: 農村都市計画_ 黒川紀章建築都市設計事務所 5. Image: PSYCHO-PASS_Production I.G